Shopify(自社ECサイト)の基本的な戦略について
自社ECサイトとは
自社ECサイトとは、自分でドメインを取得し、サイトを構築・運営するECサイトのことです。楽天やAmazonのようなモールに出店するのではなく、独立した自分だけのオンラインストアを持つ形態です。
Shopifyは、この自社ECサイトを構築するためのプラットフォームです。サーバーの用意やセキュリティ対策などの技術的な部分はShopifyが担い、ストア運営者は商品販売に集中できます。
モール型ECとの違い
ECサイトには大きく分けて「モール型」と「自社EC型」の2つがあります。
モール型EC(楽天、Amazon など)
- モール自体に集客力があり、出店すれば一定のアクセスが見込める
- 販売手数料が高い(売上の10〜15%程度)
- 顧客データはモール側が管理するため、活用しづらい
- モールのルールに従う必要がある
自社EC型(Shopify など)
- 集客は自分で行う必要がある
- 販売手数料が低い(Shopifyの場合、決済手数料のみ)
- 顧客データを自分で管理・活用できる
- サイトデザインや施策を自由に決められる
モールは「人通りの多いショッピングモールに出店する」イメージ、自社ECは「自分の店舗を路面に構える」イメージです。
自社ECの強みと弱み
強み
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ブランディングの自由度 | サイトデザイン、世界観、顧客体験をすべて自分でコントロールできます。モールでは他店舗と似たような見た目になりがちですが、自社ECならブランドの個性を存分に表現できます。 |
| 顧客との直接的な関係構築 | 購入者のメールアドレスや購買履歴を自分で管理できるため、メールマーケティングやリピーター施策を自由に行えます。 |
| 利益率の高さ | モールの高い手数料がないため、同じ売上でも手元に残る利益が大きくなります。 |
弱み
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 集客の難しさ | モールのような既存の集客力がないため、自分でアクセスを集める必要があります。これが自社EC最大の課題です。 |
| 技術的な知識が必要 | 自社ECサイトを内製で運営するなら、HTML/CSSの基本的な知識が必要になります。商品ページの調整、デザインの修正、メールテンプレートの編集など、あらゆる場面で必要になるからです。さらにShopifyの場合では、テーマのカスタマイズにはLiquidというShopify独自のテンプレート言語の理解も求められます。自分で対応できない場合は、信頼できる外注先を見つけることも運営を成功させる上で重要な選択肢です。技術面はパートナーに任せ、商品開発や顧客対応に集中するという分担も、立派な戦略のひとつです。 |
基本戦略の考え方(アクセス編)
よくある間違い
ECの売上を説明するとき、次のような式がよく使われます。
売上 = アクセス数 × CVR(購入率)× 客単価
この式自体は間違っていませんが、これをそのまま鵜呑みにすると失敗します。なぜなら「アクセス」や「CVR」を一括りにしてしまうからです。
アクセスは4種類ある
モール側でも新規/リピート指標は確認できますが、定義や粒度がサービス・機能によって異なり、施策設計にそのまま落とし込みにくいケースがあります。
モール運営に慣れている人ほど、アクセスを一括りに考えてしまいがちです。自社ECではこの視点の欠如が致命傷になります。初歩的な話ですが、ここを理解しないまま進むと、ずっと苦しむことになります。
アクセスは「購入履歴」と「訪問回数」の2軸で分類できます。
| 種類 | 説明 | CVR |
|---|---|---|
| 新規初訪 | 初めてサイトに訪れた人です。あなたのストアのことを何も知らない状態です。 | 最も低い |
| 新規再訪 | 過去にサイトを見たことはあるが、まだ購入していない人です。いわゆる「検討期間」にあたります。興味を持って戻ってきています。 | 低い |
| 既客初訪 | 過去に購入したことがある人が、購入後初めて戻ってきた状態です。すでに信頼関係ができています。 | 高い |
| 既客再訪 | 過去に購入したことがある人が、複数回訪問している状態です。いわゆるリピーターです。 | 最も高い |
なぜ分けて考えるのか
4種類のアクセスを一括りにすると、どこに問題があるのかわからなくなります。
例えば「CVRが低い」と感じたとき、原因は何でしょうか。新規初訪のCVRが低いのか、新規再訪のCVRが低いのか、それとも既客のCVRが低いのか。それぞれ原因も対策もまったく異なります。
新規初訪に対しては「信頼してもらう」施策が必要です。新規再訪に対しては「背中を押す」施策が必要です。既客に対しては「また買いたい」と思ってもらう施策が必要です。
このように分けて考えることで、初めて有効な対策が打てるようになります。
ただし、この4種類を正確に計測・区別するのは簡単ではありません。GA4やShopifyの標準機能だけでは限界があり、工夫が必要です。ここが運営者の腕の見せ所であり、日々の施策で差がつくポイントでもあります。
自社ECのアクセス獲得方法
自社ECサイトへのアクセスを獲得する方法は、主に3つあります。
ブランディング(指名検索)
ストア名や商品名で直接検索してもらう方法です。ただし、これは知名度があって初めて成り立ちます。
SEO
検索エンジンからの自然流入を狙う方法です。効果が出るまでに時間がかかり、競合も多いため、すぐに成果を出すのは難しい領域です。
広告
Google広告、Meta広告(Facebook・Instagram)、TikTok広告などを活用する方法です。
ほとんどのストアは知名度がなく、指名検索は期待できません。SEOも時間がかかります。そのため、多くのストアは広告からスタートすることになります。
広告を前提とした戦略
広告を出稿する場合、先ほどの4分類の視点が極めて重要になります。
広告でサイトに訪れた人は「新規初訪」です。この段階ではCVRが最も低いため、1回の訪問で購入に至らないケースがほとんどです。
しかし、興味を持った人は後日また訪問してきます。これが「新規再訪」であり、検討期間にあたります。この段階ではCVRは新規初訪より高くなります。
広告の効果を測定する指標としてROAS(広告費用対効果)がありますが、新規初訪だけで判断すると正しい評価ができません。検討期間を経て購入に至る顧客も含めて考える必要があります。
この視点がないと「広告を出しても売れない」と早々に判断してしまい、本来獲得できたはずの顧客を逃すことになります。
基本戦略の考え方(CVR編)
モールとの決定的な違い
自社ECのCVRを考える上で、モール型との決定的な違いを理解しておく必要があります。
楽天やAmazonで買い物をする人は、すでに会員登録が済んでおり、支払い情報も登録されています。そのため購入のハードルが非常に低いのです。
一方、自社ECサイトでは、訪問者にとって「初めて見るサイト」です。個人情報や支払い情報を入力する必要があり、ここで離脱する人が非常に多いのです。
Shopifyではゲスト購入(会員登録なしでの購入)も可能ですが、標準のチェックアウト画面では明確な導線がありません。ログインせずに買えるだけで、「ゲスト購入」というボタンがあるわけではないのです。
そのため、購入方法を説明するページを用意したり、カートページでゲスト購入・会員登録・ログインの選択肢をわかりやすく提示するなど、UIUX設計が重要になります。
なお、Shopifyは海外製のプラットフォームであり、英語圏では「ゲスト購入」という概念自体があまり意識されていません。日本では楽天などのモール文化が根付いているため、会員登録への抵抗感が強い傾向があります。この文化差を理解した上でUIを設計する必要があります。
このハードルを越えてもらうためには、次の2つの要素が重要になります。
信頼できるかどうか
初めて見るストアに個人情報を入力するのは不安が伴います。その不安を払拭するために、以下の要素が重要です。
- 特定商取引法に基づく表記・問い合わせ窓口:法的に必要な情報がきちんと記載されているか、何かあったときに連絡できる窓口があるかは、信頼性の基本です。
- 配送について:配送日数や送料が明確に記載されているかどうか。「いつ届くかわからない」「送料がいくらかわからない」状態では、購入に踏み切れません。
- 支払い方法の選択肢:クレジットカードだけでなく、コンビニ決済やキャリア決済など、選択肢が多いほど購入のハードルは下がります。
- ページスピード:表示が遅いサイトは、それだけで不信感を与えます。技術的な問題ですが、CVRに直結します。
- セキュリティについて:訪問者はShopifyが世界最大のECプラットフォームだと理解していません。初めて見るサイトにクレジットカード情報を入力するのは不安なものです。カートページやフッターなどで「SSL暗号化通信で保護されています」といった記載をすることで、安心感を与えられます。
- レビュー:他の購入者の声は、信頼性を高める強力な材料です。
お買い得かどうか
割引をしないストアは論外です。
「うちの商品は付加価値が高いから値引きしない」と思っているなら、考え直してください。本当にそれだけの付加価値があるなら、すでに指名検索が起きているはずです。指名検索が起きていないということは、顧客から見た付加価値はその程度だということです。
モールでさえ、ポイントやクーポン施策でお買い得感を演出しています。楽天やAmazonが負担してくれているこれらの施策を、自社ECでは自分で行う必要があります。同等かそれ以上の割引をしなければ、わざわざ会員登録してまで買う理由がありません。
Shopifyではチェックアウト画面にディスカウントコードの入力欄が標準で表示されます。つまり、Shopify自体がディスカウントを前提に設計されているのです。それを活用しないなら、Shopifyの設計思想を活かしきれていません。
この2つを意識しないまま集客だけに力を入れても、CVRは上がりません。
まとめ
自社ECサイトは、モール型と比べて自由度が高く利益率も良い反面、集客や技術面のハードルがあります。
基本戦略として最も重要なのは、アクセスとCVRを一括りにしないことです。
- アクセスは「新規初訪」「新規再訪」「既客初訪」「既客再訪」の4種類に分ける
- それぞれCVR(購入率)がまったく異なる
- 必要な施策もそれぞれ異なる
この視点を持つことで、自分のストアのどこに問題があるのかが見えるようになります。
そして、これらの基礎がどれだけ高いレベルで実践できているかが、LTV(顧客生涯価値)にも影響します。信頼性が高く、お買い得感のあるストアは、既客の再訪率も高くなるからです。
もちろん、最も重要なのは商品そのものです。しかしEC運営の観点では、今回解説した内容が基礎になります。
ブランディングや指名検索を目指すのは、これらの基礎ができてからの話です。
また、自社ECにはモールにはない大きなメリットがあります。
モールで売上を積み重ねても、顧客が覚えるのは「楽天で買った」「Amazonで買った」という体験であり、ストア名やブランド名は記憶に残りにくい構造になっています。つまり、いくら売ってもブランディングにはつながりません。知名度はモールに吸収されてしまうのです。
一方、自社ECで売上を作ると、顧客は「〇〇というお店で買った」という体験として記憶します。購入体験が積み重なることで自然と知名度が上がり、指名検索が増えていきます。
自社ECサイトの最終的なゴールは「第一想起(Top of Mind)」の獲得です。第一想起とは、顧客があるカテゴリの商品を買おうと思ったときに、最初に思い浮かぶブランドになることです。
第一想起を獲得できれば、広告に頼らずとも安定した売上が見込めるようになります。これこそが自社ECの真の強みであり、モールでは決して手に入らない資産です。
本記事で解説した内容は、弊社が多くのストアを支援する中で実際に成果を出してきた考え方です。
自社ECは確かに簡単ではありません。しかし、この記事で解説した基本を理解し、ひとつずつ実践していけば、必ず成果につながります。諦めるための記事ではなく、成功するための記事として書きました。
正しい方向に努力を積み重ねれば、自社ECはあなたのビジネスを大きく変える力を持っています。
具体的なCVR改善のチェックポイントは「Shopifyで多くのストアが売上が上がらない理由」でも詳しく解説しています。本記事と合わせてお読みください。
- 著者
- ARMERIA編集部
- 監修
- ARMERIA(Shopifyアプリ開発/ECコンサルティング)
- 最終更新