Shopifyで多くのストアが売上が上がらない理由

Shopifyで多くのストアが売上が上がらない理由

はじめに

Shopifyは「作って終わり」では売れません。

多くのストアが「多機能」という言葉に惑わされ、結果的にユーザーの利便性を損なっています。機能が多いことと、売れるストアであることはイコールではありません。むしろ、機能を詰め込みすぎて遅くなったサイト・購入するのに欲しい情報が無い——これらがユーザーを静かに離脱させています。

本記事では「集客」や「LP」の話はしません。キリがないですし、そもそもの話をしたいからです。

いくら広告費をかけても、CVR(転換率)が低いサイトではROASが合いません。ROASが低ければ広告費を消化できず、スケールしません。そしてCVRが低いストアはLTV(顧客生涯価値)も低くなる傾向があります。つまり、買いやすいサイトを作らない限り、広告を打っても赤字になります。

集客やCRMの前に、まずは「来た人を逃さない」こと。CVR改善は今すぐ着手できます。本記事では、弊社が多くのストアを支援する中で見えてきた、CVRを変える具体的なチェックポイントを公開します。

1. 配布テーマの「肥大化」がユーザーを逃している

Shopifyの無料・有料テーマは、世界中のあらゆる業種・規模のストアで使えるよう設計されています。そのため汎用性を高めるための機能が大量に組み込まれており、実際には使わないコードがテーマ内に山ほど眠っています。

想像してみてください。1ページを表示しているだけなのに、裏では10倍の無駄なコードを読み込ませようとしている状態を。

この「肥大化」が引き起こすのは、サイト表示速度の低下です。そしてサイト速度の遅延はCVRを直撃します。これは体感の話ではなく、数字として明確に現れる事実です。

PageSpeed Insightsのスコア比較(改善前と改善後)

弊社では独自に最適化したテーマを使用していますが、読み込み速度の改善だけでCVRが10%〜20%向上するケースは珍しくありません。特別なマーケティング施策を打ったわけではなく、ただ「速くした」だけでこの差が出ます。

対策はシンプルです。使っていない機能は「オフ」ではなく「削除」します。アプリで実装する必要がない機能はLiquidで直接実装します。そして、日本のストアでは使わない機能——あいまい検索、多通貨・多言語対応など——は思い切って削除します。テーマは軽ければ軽いほど良いです。

2. クーポンを配布しないならShopifyを使わない方がいい

Shopifyはポイント制度ではなく、ディスカウント(クーポン)を前提とした設計になっています。※Shopifyでは「ディスカウント」と呼ばれますが、本記事では一般的な「クーポン」で統一します。

チェックアウト画面には標準でクーポンコードの入力欄が表示されます。これが問題です。

チェックアウトでクーポンが標準装備
Shopifyではデフォルトでクーポンコードを入力する項目が表示されます。

ユーザーがこの入力欄を目にしたとき、「どこかにクーポンがあるのでは?」という疑念が生まれます。コードを探しにサイトを離脱し、検索し、SNSを漁り——そのまま戻ってこないこともあります。あるいは「自分だけ損をしている」という不信感を抱いたまま購入を見送ることもあります。

つまり、クーポンを配布しないストアは、この入力欄があるだけで離脱リスクを抱えています。極端に言えば、クーポン施策をやる気がないならShopifyを使わない方がいいです。

逆に言えば、クーポンを積極的に、効率的に見せることでCVRは確実に上がります。商品ページの価格表示と「カートに入れる」ボタンのすぐ近くに、今使えるクーポンを明示します。「探させる」のではなく「見せる」設計に変えるだけで、カゴ落ちは減り、購入率は上がります。

クーポン.JPによる商品ページでのクーポン表示例
関連:クーポン.JPによる視覚的な訴求

3. 配送の不透明さは「カゴ落ち」の最大要因

「いつ届くか分からない」という不安は、想像以上に購入の障壁になります。

Shopify標準には配送日指定の機能がなく、チェックアウト画面のカスタマイズはPlus限定になっています。結果として多くのストアが無記載や、「ご注文後◯営業日以内に発送」といった曖昧な表記に頼らざるを得ません。

しかし、ユーザーが知りたいのは「発送日」ではなく「届く日」です。欲しいと思った瞬間に「最短でいつ届くか」が見えなければ、ユーザーは比較検討という名の離脱に移ります。

Plus契約のストアであれば、配送日指定機能は必ず導入すべきです。そしてPlus以外のストアでも、「今注文したらいつ届くか」をある程度確約することはできます。

具体的には、配送についての専用ページを用意し、注文から届くまでの流れを可視化します。受注の締め切り時間、出荷対応、配送会社の集荷、倉庫から届け先までの目安日数——この流れが一目で分かるだけで、ユーザーの不安は大きく軽減されます。土日祝の出荷対応についても明示しておくことが重要です。

カレンダー.JPによるお届け予定日の表示例
カレンダーをお届けについてのページに配置したサンプルです。

「届く日が分かる」という安心感は、送料無料と同じくらいの訴求力があります。

関連:カレンダー.JPによる配送導線の最適化

4. チェックアウト画面の「小さな設定」が大差を生む

チェックアウト周りの設定は、一つひとつは小さな項目に見えて、積み重なると大きな差を生みます。

Shop Payの有効化

Shop Payはリピーターにとって非常に便利な機能です。過去の入力情報が保存されるため、2回目以降の購入では住所もカード情報も入力不要になります。入力の手間を極限まで減らすことがCVR向上の基本であり、Shop Payはその意味で有効にすべき機能です。

実際、Shop Payは意外と使われています。さらに決済手数料の料率も低めに設定されているため、2026年1月現在、オンにしておくことをお勧めします。

ダイナミックチェックアウトの扱い

一方で、ダイナミックチェックアウト(商品ページに表示される即決済ボタン)については慎重に考える必要があります。

一般的には「便利だから有効にすべき」と言われていますが、日本市場の実態は異なります。Amazon Pay撤退後、ダイナミックチェックアウトで動く決済手段はShop Pay、Apple Pay、Google Pay程度ですが、これらの国内シェアは限定的です。

そもそもShopifyで構築された自社ECは、ほとんどが「初めての購入者」で構成されます。信頼関係がゼロの状態で、見慣れないストアの即決済ボタンを押す人がどれだけいるでしょうか。

むしろ重要なのは、「カートに追加」→「カート確認」→「チェックアウト」というステップを踏ませることで、購入プロセスへの不信感を払拭することです。海外ブログの情報を鵜呑みにしたり、「機能があるから使う」という発想で設定するのは、売れないストアを作る典型的なパターンです。

ダイナミックチェックアウトの最適解は、完全に停止するのではなく、Liquidの{% if customer %}でログインユーザーにのみ表示することです。リピーターには便利な機能として活かしつつ、初回訪問者には不信感を与えません。この分岐が正解です。

1ページ vs 3ページチェックアウト

チェックアウトのページ構成は商材によって使い分けます。低単価で即決型の商材は「1ページ」でスピード重視、高単価(目安として2万円以上)でじっくり検討型の商材は「3ページ」で安心感を重視するのが基本です。

そもそも高単価商品の場合、サイトに初めて訪れたユーザーが即購入することはほぼありません。初回訪問のCVRを確認すればわかりますが、サイト全体のCVRが1%だとしても、初回訪問での即購入は0.1%程度です(単価によって変動はあります)。高単価商材で3ページを選ぶ理由は、初回訪問者を焦らせず、再訪時に安心して購入してもらうためです。

顧客アカウントの設定

顧客アカウントを「必須」に設定しているストアをたまに見かけますが、これは厳禁です。アカウント作成の手間は、そのまま離脱に直結します。必ず「任意」または「ゲスト購入」を許可してください。

5. 「欲しいものに辿り着けない」導線設計

どれだけ良い商品を揃えていても、ユーザーがその商品に辿り着けなければ意味がありません。

特にスマホでの操作性は見落とされがちです。「カートに入れる」ボタンは親指が届く位置にありますか? 商品数が多い場合、直感的に絞り込めるフィルタリング機能がありますか? 検索窓に入力したキーワードで、期待する商品がちゃんと出てきますか?

これらは派手な改善ではありませんが、ユーザーが「欲しいものを見つけて、カートに入れる」という基本動作をスムーズに行えるかどうかを左右します。導線の小さな引っかかりが、積み重なって大きな機会損失になります。

6. 商品ページで「買う理由」を見せているか

ユーザーが商品ページに辿り着いても、そこで必要な情報が揃っていなければ購入には至りません。

よくある問題は、商品説明が不十分なまま「カートに入れる」ボタンだけが目立っている状態です。ユーザーは「これで合っているか?」という不安を抱えたまま離脱します。

具体的に見直すべきポイントを挙げます。

  • サイズ表の掲載:アパレルに限らず、寸法が購入判断に影響する商品は必須です。「思っていたサイズと違った」は返品理由の上位であり、事前に解消できます
  • シリーズ商品の導線:メタフィールドを活用して、関連商品や同シリーズを商品ページ内で見せます。「他の色は?」「セット商品は?」という疑問をその場で解決できます
  • バリエーションの画像表示:色やサイズのバリエーションを、テキストではなく画像で選択できるようにします。視覚的に選べることで迷いが減り、カート追加率が上がります

これらは派手な施策ではありませんが、「御社の商品を十分に見せる設計になっていますか?」という問いに対する具体的な答えです。商品の魅力が正しく伝わっていなければ、どれだけ集客しても売上にはつながりません。

まとめ:売れるストアへの最短ルート

売上が上がらない理由は、デザインの良し悪しではありません。「ユーザーにストレスを与えていること」に集約されます。

本記事で挙げたチェックポイントを振り返ります。

  1. テーマの軽量化:使わない機能は「オフ」ではなく「削除」します。速度改善だけでCVRは10〜20%変わります
  2. クーポンの可視化:入力欄があるなら「探させる」のではなく「見せる」。クーポン施策をやらないならShopifyを使う意味が薄れます
  3. 配送の明示:ユーザーが知りたいのは「発送日」ではなく「届く日」です。専用ページで注文から届くまでの流れを可視化します
  4. チェックアウト設定の最適化:Shop Payはオン。ダイナミックチェックアウトはログインユーザーのみに表示。高単価(2万円以上)は3ページ。アカウント必須は厳禁です
  5. スマホ導線の確認:「カートに入れる」ボタンは親指が届く位置にありますか。フィルタリングは直感的ですか
  6. 商品ページの情報設計:サイズ表、シリーズ商品の導線、バリエーションの画像表示。「これで合っているか?」という不安を消します

これらは派手な施策ではありません。しかし、CVRが低いままでは広告を打ってもROASが合わず、広告費を消化できず、スケールしません。そしてCVRが低いストアはLTVも低くなります。集客やCRMに投資する前に、まずは「来た人が買える」サイトになっているかを確認すべきです。

InstagramやTikTokを始めようと考える前に、本記事で挙げた項目が対応できているか、そしてLPが充実しているかを確認してください。マーケティング施策を考える前に、まずは足元から。広告費を増やすより先にすべきは、この「当たり前」を徹底的に磨き上げることです。それが自社EC成功の絶対条件です。

ブログに戻る